60代がNISAを始める3つの理由
「NISAは若い人のもの」と思っている方も多いですが、NISAには年齢上限がありません。非課税保有期間も無期限のため、60代で始めても十分なメリットがあります。
- ①年齢上限なし・非課税保有期間無期限:何歳でも口座開設でき、保有し続ける限り運用益は非課税
- ②定年後も10〜20年の運用期間がある:60歳で始めても80歳まで20年間、複利効果を活かせる
- ③退職金のまとまった資金を活用できる:年360万円(最大)を最短5年で1,800万円の非課税枠を使い切れる
金融庁の2025年6月末データによると、NISA口座数は2,696万口座に達し、60代以上の利用者も増加しています。退職金の運用手段として、税金がかかる特定口座よりNISAを優先する考え方が広まっています。
特定口座(課税口座)で年率5%の運用益が出た場合、20.315%の税金が引かれます。1,000万円を10年運用した場合、NISAなら約1,629万円ですが、課税口座では税引き後約1,480万円と約150万円の差が生じます。
退職金をNISAで運用する方法
退職金は一生に一度のまとまった資金です。NISAの年間360万円(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)を使って計画的に非課税口座に移していきましょう。
| 退職金額 | 年率3%・10年後 | 年率5%・10年後 | 年率3%・20年後 | 年率5%・20年後 |
|---|---|---|---|---|
| 500万円(NISA枠で全額運用) | 約672万円 | 約814万円 | 約903万円 | 約1,327万円 |
| 1,000万円(3年でNISA枠へ) | 約1,344万円 | 約1,629万円 | 約1,806万円 | 約2,653万円 |
| 2,000万円(NISA1,800万円+課税口座) | 約2,688万円 | 約3,258万円 | 約3,612万円 | 約5,306万円 |
NISAの年間上限は360万円(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)です。60歳で開始した場合、最短5年(毎年360万円ずつ)で1,800万円の生涯枠を使い切れます。退職金が1,800万円以上ある場合は超過分を特定口座で運用します。
退職金をいきなり全額一括投資するのは相場リスクがあります。「ドルコスト平均法」で年数回に分けて購入するか、最初に成長投資枠(年240万円)で一括、残りをつみたて投資枠(月10万円)で積み立てる方法がリスクを抑えやすいです。
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60代のリスクを抑えた商品選び
60代は資産形成よりも「資産を守りながら増やす」フェーズです。大きな損失は回復する時間が少ないため、リスクを抑えた商品選びが重要です。
| 運用スタイル | 株式比率 | 推奨商品例 | 想定利用者 |
|---|---|---|---|
| 積極型(60〜65歳) | 株式60〜70% | 全世界株式60%+債券40%のバランスファンド | まだ働いている・10年以上運用予定 |
| 標準型(65〜70歳) | 株式40〜50% | バランスファンド(株式50%型)・債券インデックス | 年金受給開始・リスクを落とし始める |
| 安定型(70歳以上) | 株式20〜30% | バランスファンド(株式30%型)・MMF・債券中心 | 取り崩し開始・元本割れを避けたい |
個別株や高配当株への集中投資は価格変動リスクが高く、60代には向いていません。バランスファンド(株式と債券が自動で調整される)は一本で分散投資ができ、管理の手間も少ないため60代に特に適しています。
公的年金との合算:月いくら足りない?
厚生年金の平均受給額は夫婦2人世帯で月約22万円(2024年度)です。一方、老後の生活費の目安は月25〜30万円といわれており、毎月3〜8万円の不足が生じるケースが多いです。
| 月不足額 | 20年間の不足総額 | 必要NISA残高(取り崩し率4%) | 必要NISA残高(取り崩し率3%) |
|---|---|---|---|
| 月3万円(年36万円) | 720万円 | 900万円 | 1,200万円 |
| 月5万円(年60万円) | 1,200万円 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 月8万円(年96万円) | 1,920万円 | 2,400万円 | 3,200万円 |
| 月10万円(年120万円) | 2,400万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
「取り崩し率4%ルール」とは、資産の4%を毎年取り崩しても元本が長期的に維持されるという経験則です(米国の研究に基づく)。月5万円の不足があれば1,500万円のNISA残高が目安になります。NISA口座でこの残高を目指して運用を続けることが60代の目標です。
取り崩し方法:年率3〜4%で長持ちさせる
老後の資産取り崩しには3つの方法があります。それぞれの特徴を理解して自分に合ったものを選びましょう。
| 取り崩し方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 定率取り崩し(4%ルール) | 残高の一定割合を毎年引き出す | 資産が長持ちしやすい・インフレに強い | 受取額が毎年変動する |
| 定額取り崩し | 毎月一定額(例:月5万円)を引き出す | 生活費の見通しが立てやすい | 相場下落時に元本を大きく削る |
| 配当・分配金受取 | 高配当株・分配型ファンドの収益を受取 | 元本を減らさずに収入を得られる | 分配型ファンドは信託報酬が高い場合がある |
バケツ戦略の60代版
バケツ戦略は資産を「使う時期」ごとに分けて管理する方法です。60代版は次の3つのバケツで管理します。①現金バケツ(1〜2年分の生活費を普通預金・定期預金に確保)、②中期バケツ(3〜10年分をバランスファンドで運用)、③長期バケツ(10年以上先をNISAで株式インデックスで運用)。現金バケツがあると相場下落時でも焦って売却する必要がありません。
【実例】62歳・退職金1,500万円をNISAで老後20年間運用する計画
田村さん(62歳・元会社員)は60歳で定年退職し、退職金1,500万円を受け取りました。公的年金は65歳から夫婦で月22万円の見込みですが、現在の生活費は月27万円。月5万円の不足が老後の悩みです。NISAでどう対処するか具体的に見ていきましょう。
| ステップ | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| ①生活防衛資金の確保 | 3年分の生活費を現金で保有 | 1,000万円(月27万円×36ヶ月) |
| ②NISAへの移行計画 | 残り500万円をNISAへ(年360万円上限) | 1年目360万円+翌年140万円 |
| ③NISA商品選択 | バランスファンド(株式50%・債券50%) | eMAXIS Slim バランス等 |
| ④65歳から年金受給開始 | 月22万円受給開始・不足月5万円をNISA取り崩しで補う | 年60万円取り崩し(残高の約4%) |
田村さんの場合、62歳時点でNISAに500万円を移し、65歳から年金が始まる3年間は現金1,000万円から生活費を支出。65歳以降は年金22万円+NISAから月5万円取り崩しで月27万円の生活費を賄います。NISAの残高は運用(年3〜4%)で増え続けるため、80代まで資産が持続する見込みです。
| 年齢 | NISA残高(年3%運用) | 年間取り崩し額 | 取り崩し率 |
|---|---|---|---|
| 65歳(取り崩し開始) | 約560万円 | 60万円 | 約10.7%(初年) |
| 70歳 | 約600万円 | 60万円 | 約10% |
| 75歳 | 約640万円 | 60万円 | 約9.4% |
| 80歳 | 約680万円 | 60万円 | 約8.8% |
このケースでは取り崩し率が10%超と高めですが、年金22万円という安定収入があるため持続可能です。退職金が多く年金も少ない場合は、取り崩し率4%以下(「4%ルール」)に抑えた設計が必要になります。
60代が絶対に避けるべき「退職金の運用ミス」
退職金は「人生最大の一時収入」だからこそ、失敗も大きくなります。60代が特にやりがちな運用ミスを整理します。
| NG行動 | 内容 | なぜダメか |
|---|---|---|
| 退職金を全額一括投資 | 受取直後に全額を株式で一括購入 | 高値つかみリスク大・暴落時の回復期間が短い |
| 銀行の勧める仕組み債・外貨商品 | 高手数料の複雑な商品を購入 | 手数料が年1〜3%で複利が削られる |
| 高配当株への集中投資 | 国内高配当株10銘柄程度に集中 | 個別企業リスク・減配リスクがある |
| 現金のみで保有 | インフレを考慮せず全額定期預金 | 年率2〜3%のインフレで実質価値が目減り |
| 詐欺的商品への投資 | 「退職金向け高利回り」をうたう商品 | 元本割れ・詐欺リスク。公的機関が推奨しない商品は避ける |
定年退職後は「金融機関からの勧誘が増える」ことが知られています。銀行・証券会社は退職金という大きな資金を狙った商品を積極的に提案してきますが、手数料が高い商品は長期的なリターンを大きく蝕みます。NISAで低コストインデックスファンドを自分で選ぶことが、最もシンプルで合理的な選択です。
退職後に銀行窓口でNISAの相談をすると、手数料の高いアクティブファンドを勧められることがあります。自分で信託報酬0.1%未満の商品を選ぶか、証券会社の口座を別途開設してネットで手続きすることをおすすめします。
まとめ:60代NISAの3つのポイント
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- ①退職金をNISAに計画的に移す:年360万円ずつ最短5年で1,800万円の非課税枠を活用する
- ②リスクを年齢に合わせて調整:60代は株式50〜70%のバランス型を基本とし、70代以降は徐々に安定型へ
- ③取り崩し計画を立てる:4%ルールを基準に月不足額から必要な残高を逆算し、NISAでの運用継続と取り崩しを両立する
60代からのNISA活用は「老後の不安を減らす」ための最も有効な手段の一つです。非課税で運用益を得ながら取り崩せるNISAは、公的年金を補完する第2の収入源として機能します。退職金が入ったタイミングで早急にNISA口座を開設し、計画的に移行することが60代の最優先課題です。
よくある質問
Q. 60代でもNISA口座を開設できますか?
A. はい、NISAに年齢制限はありません。何歳でも口座開設でき、非課税保有期間も無期限です。60歳でも80歳でも開設できます。ただし口座開設には証券会社または銀行での手続きが必要で、マイナンバーカードまたは通知カードが必要です。
Q. 退職金を一括でNISAに入れることはできますか?
A. 一括での入金はNISAの年間上限(360万円)の範囲内でのみ可能です。退職金が360万円以下なら一括でNISAに投資できますが、それ以上は複数年に分けて入金します。最短5年(毎年360万円)で生涯枠1,800万円を使い切れます。退職金が多い場合は超過分を特定口座で運用しましょう。
Q. 60代はどんな商品を選べばいいですか?
A. バランスファンド(株式40〜60%・債券40〜60%のもの)が60代には特に向いています。一本で株式と債券に分散投資でき、管理も簡単です。個別株や高配当株への集中投資は価格変動リスクが大きいため避けましょう。運用期間が10年以上あるなら全世界株式インデックスも選択肢に入ります。
Q. NISAで保有している資産は相続時にどうなりますか?
A. NISA口座の資産は相続時に相続財産として扱われます。ただし被相続人(亡くなった方)のNISAの非課税メリットは死亡時点で終了し、相続人が引き継いでも非課税ではありません。相続人が相続した資産を売却する際には通常の課税口座と同様に課税されます。
Q. 年金受給後もNISA積立を続けるべきですか?
A. 年金だけで生活費を賄えている場合でも、余裕資金があればNISA積立を続ける価値があります。非課税で運用益が増え続けるためです。ただし生活費が不安定になる場合は無理に積立を続けず、必要に応じて取り崩しに切り替えましょう。NISAは積立と取り崩しを柔軟に切り替えられます。